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読書:「人間失格」 太宰治をアラフォーの今読んでみる

人間失格太宰治

 

多くの太宰治作品の中で、この作品は太宰治本人の伝記的遺作といえます。この作品を私が好きな理由はそこにあります。


太宰治作品は「青春の文学」とよく言われますが、その象徴は、太宰治本人が、一人のおとなとしての自立が遅かったことがひとつに挙げられるでしょう。


太宰治は、30歳を過ぎても地元の家族からの仕送りをあてにして生活していたそうです。そして、精神的にも不安定な要素を多く抱えていたらしいのです。要は、未熟ということでしょう。


この「人間失格」には主人公の「葉ちゃん」と呼ばれる人見知りな少年の姿が描かれています。


自分の父親に対しても本心を言えない様子が書かれており、父親に気を遣ってわざわざウケのいい行動を取ったり、おどけてみたりするありさまが明確に描写されています。

これが、太宰治の幼少期だったのかと思うと、この作品の前後の太宰治作品の内容がよく理解できるわけです。


主人公の「葉ちゃん」は、学校に上がっても仲間の中で「おどけ」を繰り返します。そうです。自分という人間の本性を明らかにする、もしくは暴かれることを嫌った一面が描写されているのです。


ただひとり、病弱なクラスメイトからは、おどけを見破られてしまうわけですが、この時の「葉ちゃん」の動揺ぶりの明確さが私がこの作品の好きな理由でもあります。


「葉ちゃん」は、そのクラスメイトに近寄り、友人関係を築きはじめます。みみだれの始末のお世話をしてあげたりと唯一の気の置けない友人となります。人間関係の構築に苦労していた不安定な性格を表しているのです。


太宰治は、以降の自分の作品の中で、自分を「いい男」と表現したかと思えば、「最低な男」と表現していきます。


つまり、太宰治自身の、自分自身へのアイデンティティの欠如が如実にこの作品には込められているといえましょう。


晩年、モルヒネ中毒になるわけですが、これも現実の太宰治の生活の中の出来事と見事に一致します。
人間失格」は、太宰治作品を読む上で、ひとつの入門書ともいえる秀作といえます。