エッセイ感想:町田康の【テースト・オブ・苦虫】
愛おしいおっさんの本
私の好きな作家の一人、町田康さん。
町田康の作品には、「しょうもないおっさん」が
よく出てきます。
作品のほとんどにしょうもないおっさんが登場します。
そのおっさん達の訳のわからなさ、
うだつの上がらなさ、なんとも言えない
奇妙さが、作品を読み進めていくうちに
何故だかとても愛おしく思えてきて、
物語の最後には、おっさんとの別れが
近づいている…なんて考え、寂しく感じたりもします。
そんな、しょうもないおっさんを書かせたら
右に出る者は居ない町田康の【テースト・オブ・苦虫】。
町田康のエッセイです。
このシリーズの主役は架空のしょうもないおっさんではなく、町田康というおっさんです。
才能もセンスも兼ね備えている上に、実は顔まで男前、美声の持ち主でもある町田康。
しかしエッセイの中に居る町田康は、やはり彼の頭の中に居る架空の人々と同じような、しょうもないおっさん。
格好いいのに格好つけない。
むしろ、格好悪いところばかりを書き連ね、
町田康イコール格好悪い、なんて印象さえ
植えつけてくるような本です。
しかしそこが彼の最大の魅力、私が彼を
好きな理由でもあります。
格好悪いところが格好いい。
しょうもないおっさんなのに格好いい。
こんなに格好いい、しょうもないおっさん。
なかなか居ません。
渋さもダンディさも特に感じられないのに…
不思議な魅力でいっぱいです。